Chim↑Pom from Smappa!Group
穴番 / Who where what is プロトタイプ
本作は「奈落」をテーマにした、
ロボット「ペッパーくん」とサーチライトを用いた作品です。
「奈落」とは仏教で「底のない地獄」を指し、江戸時代の歌舞伎劇場では舞台下の空間を意味し、
そこで働くひとは「穴番」と呼ばれました。
一方、沖縄において「穴」や「地下」という概念は、
戦争の記憶とも結びついているかもしれません。
本作のペッパーくんは手にしたサーチライトで何かを探し続けます。
「探す」という行為には「見失う」ことが含まれており、
このペッパーくんの動きは終わりのない探求や、不確実性に満ちた存在を表しています。
展示されたペッパーくんは、観客に反応してサーチライトを向けますが、すぐに別の方向へと視線を移します。
その動きには人間への関心が示される一方で、
敵意や好意、または期待が入り混じった感情が感じ取れるかもしれません。
しかし、ペッパーくん自身の意図は不明瞭であり、観客に何を探させようとしているのかは謎です。
親しみやすい外見のペッパーくんは、多くの観客に安心感を与えるでしょう。
しかし、その内部は完全に改造され、もはや本来のプログラムを持っていません。
もしこのロボットが軍事兵器であったとしたらどうでしょうか。
このペッパーくんは「奈落」というコンセプトに寄生またはハッキングされた存在です。
その結果、「奈落」を彷徨い続け、何かを探し、そして見失い続けるロボットがここに立っています。
沖縄の地で、このロボットが探し続けるのは一体何なのでしょうか。
展示会場
大宜味村立旧塩屋小学校 沖縄県国頭郡大宜味村塩屋538
ARTIST
撮影:山口聖巴
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卯城竜太・林靖高・エリイ・岡田将孝・稲岡求・水野俊紀により、2005年に東京で結成されたアーティストコレクティブ。
時代のリアルを追究し、現代社会に全力で介入したクリティカルな作品を次々と発表。
世界中の展覧会に参加するだけでなく、独自でもさまざまなプロジェクトを展開する。
また同時代を生きる他のアーティストたちや様々なジャンルの展覧会やイベントの企画など、キュレーションも積極的に行い、
アーティストの在り方だけでなく「周縁」の状況を変容、拡大させている。
そのプロジェクトベースの作品は、日本の美術館だけでなくグッゲンハイム美術館、ポンピドゥ・センターなどに
コレクションされ、アジアを代表するコレクティブとして時代を切り開く活動を展開中。
2022年、森美術館で個展が開催された。