片桐功敦Atsunobu Katagiri
たましいの通り道・やいまの壺パナリ
沖縄で焼き物といえば、やちむんを思い浮かべますよね。八重山には、やちむんとは異なる焼き物の伝統があって、「パナリ焼」というものがありました。
パナリ焼は生活の道具で、水を貯めたり、食べ物を貯蔵したりしたそうです。底に穴が空いているものもあって、人が亡くなると骨壷としても使われていました。今では作られていないし、使われてもいません。水道をひねったら水が出てくるし、食べ物はスーパーに売っているし、人が亡くなったら火葬しますからね。
日本全国どこに行っても同じような暮らしをしていますから、沖縄や八重山だけが独特な何かを維持している、というようなことも少なくなっているでしょう。
ただ、伝統的な暮らし方の中には、その土地の風土を反映した、生きていく知恵や困った時のヒントみたいなものが隠されていたように僕は思うんです。
でも残念なことに、いま八重山でパナリ焼を見つけることは殆ど不可能です。博物館などに収蔵されているものはありますが、そうでないものは骨董屋さんや陶芸好きの人たちが買っていってしまったからだそうです。
今回は西表島で、個人蔵のパナリ焼をお借りして撮影をしました。パナリ焼が使われていた場所で、その土地に咲く花に出会わせることで、島の原風景に想いを馳せるような、そんな空気をお届けできていたら嬉しいです。
展示会場
大宜味村立旧塩屋小学校 沖縄県国頭郡大宜味村塩屋538
ARTIST
片桐功敦 Atsunobu Katagiri
華道家、花道みささぎ流家元。中学卒業後に米国留学、1994年帰国。
1997年、家元を襲名。2005年、堺市で教室とギャラリーを兼ねた「主水書房」を開設、若手アーティストの発掘、展示や出版など多岐にわたって展開。東日本大震災後の福島を訪れ、原発周辺の地で再生への願いを伝える作品を製作、撮影した『SACRIFICE ―未来に捧ぐ、再生のいけばな』(青幻社)を2015年に上梓。
作品のスタイルは、小さな野草をいけたものから現代美術的なインスタレーション作品まで幅広く、いけばなが源流として持つアニミズム的な側面を掘り下げ、文化人類学的な観点から植物と人間の関係性を紐解くことを目指している。国内外での個展、ワークショップを中心に活動している。